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宇多田ヒカル「私という存在は母から始まったんだから」、待望のニューアルバム『Fantome』をリリース [宇多田ヒカル]

宇多田ヒカル
「私という存在は母から始まったんだから」、
待望のニューアルバム『Fantome』をリリース

宇多田ヒカル2.GIF


日本中の多くのリスナーが待っていた。

決して大げさな表現ではなく
そう言い切っていいだろう。
2010年から続いていた人間活動期間を経て、
ついに宇多田ヒカルが8年半振り、
6枚目となるオリジナルニューアルバム
『Fantome』(ファントーム)を9月28日に
リリースする。

“幻“、“気配“などを意味する
フランス語をタイトルに冠した
このアルバムは、彼女が2013年に
逝去した自身の母へと捧(ささ)げた
一枚である。

新章へと踏み出す第一歩に込められた、
彼女のさまざまな想いを聞いた。

■「母を気配で感じるのなら、それでいい」

――およそ6年振りの活動再開です。

宇多田:休止を発表した時、
いろんなところで『なんで?』と聞かれて、
どう説明をしたらいいか
よく分からなかったんですけど。
要は惰力じゃないけれど、
物事って動いていると止めにくいし、
止まっていると動かしにくくなる
じゃないですか。
何だかすごい勢いで周りに後押しされて
ポンってデビューしちゃって、
そこから宇多田ヒカルがぶわーっと
大きくなってしまい。
大きくなればなるほど、大きなトラック
みたいにどんどん舵取り(かじとり)が
出来なくなって、自分で方向を
選べなくなっていたんです。
それで『これはヤバイな』と
思って休止を決めました。

――そして約8年半振りのニューアルバムです。
なぜ『Fantome』というタイトルに?


宇多田ヒカル3.GIF


宇多田:今回のアルバムは亡くなった母に
捧(ささ)げたいと思っていたので、
輪廻(りんね)という視点から
“気配“という言葉に向かいました。

一時期は、何を目にしても母が見えてしまい、
息子の笑顔を見ても悲しくなる時がありました。
でもこのアルバムを作る過程で、
ぐちゃぐちゃだった気持ちがだんだんと
整理されていって。
「母の存在を気配として感じるのであれば、
それでいいんだ。
私という存在は母から始まったんだから」と。

そうしてタイトルを考えていくうちに、
今までのように英語というのはイヤで、
かといって日本語で浮かぶ言葉はあまりに
重過ぎて、「フランス語が合うね」と
いう話になって。
そこからいろいろと模索した末に、
“幻“や“気配“を意味する“Fantome“と
いう言葉に突き当たり「これだ!」と
思いました。

――今年の4月に配信限定でリリースされた
「花束を君に」、「真夏の通り雨」
(※『Fantome』に収録)に
寄せられたリスナーからのリアクションが、
アルバムの仕上がりに大きく作用したと
聞いています。

宇多田:あの2曲を聴いて、
「もしかしてお母さんのこと?」と
気付いたリスナーの方がたくさんいて。
しかも同情とかではなく、
その前提を踏まえた上で、
共感というか感情移入をしてくれたみたいで。
これまでは自分の曲に対して、
そこまで自分の予想外の反応が上がったこと
もなかったし、それが良い評価でも
悪い評価でも、それが次の作品に響くという
ようなこともほとんどなかったんですよ。
でも、この2曲への反応は、
私にとってすごく
ポジティヴに感じられるもので、
今までになくこのアルバムに
影響を及ぼしましたね。
レコーディングの後半で、残りの歌詞を
書くための勇気をもらいました。
(この2曲と「桜流し」を除く)アルバムの
ほとんどの歌詞は、そこからの約3カ月で
一気に書き上げました。
これまでで最短記録です。
まあ「花束を君に」、「真夏の通り雨」は
題材がデリケートだった分だけかなり時間
もかかったし、ここまでが8年半とか
長かったんですけど(笑)。

そして、みんなが「お母さんのこと」だと
分かっているからこそ、絶対に母の顔に
泥を塗らないアルバムにしなければという
責任も強く感じていました。

――「花束を君に」はNHK連続テレビ小説
「とと姉ちゃん」の主題歌のために
書き下ろされた曲でしたね。

宇多田:国民的な番組なので、
いつにも増して意識的に間口を広げて
作詞をしました。
オフコースとかチューリップ、
それとエルトン・ジョンの『Tiny Dancer』
(※『可愛いダンサー~マキシンに捧ぐ』。
1971年)をイメージして、軽やかな感じの
“開いた“曲を目指しました。

いろいろなリスナーの、いろいろな状況に
当てはまってくれたらいいなあと。

――一方、『真夏の通り雨』は、
文学性の強い歌詞です。
そして日本語の美しさにハッ
とさせられます。

宇多田:この曲は、書き始める前から
日本語だけを使った歌詞にしようと
決めていました。
日本語で歌う意義と、日本語で歌う
“唄“を追求したかった。
英語が入る余地もない曲だと思ったし、
今の自分の感覚だと、英語を使うことが
“逃げ“に感じられて。ロマンを感じたり
酔いしれたりできる英語ではなくて、
自然と染み入る日本語であって、
尚も美しいと思えるものに
したかったんです。

――アルバム全体の歌詞も、わずかな
英語と仏語を除き、ほぼ日本語で
書かれています。

宇多田:制作の始めの段階から、
今回のアルバムは“日本語のポップス“で
勝負したいと意識していました。
これまでの歌詞における英語のフレーズは、
伝えたいことを直接的に歌いたくない時の
照れやお色付けに用いていたんです。
でも今回は本当に必要な言葉だけを
日本語で並べて、自分のなかで
美しいと感じられる歌詞だけを
歌いたいと思いました。

――フランス在住の
ジュリアン・ミニョー氏が
撮影した、モノクロのポートレイトによる
ジャケット写真の美しさも印象的ですね。

宇多田:ありがとうございます。
彼とはもともと知り合いだったんです。
出会った頃はまだ駆け出しだったのに、
久しぶりに彼のホームページを見たら
売れっ子になっていて、
写真も良くなっていて(笑)。

これまでのジャケットはずっと
ディレクターさんからカメラマンの
候補を挙げてもらっていたんですが、
今回は初めて自分から
「この人いいと思うんだけど、どう?」
と提案して。
自分で連絡を取り、
スケジュール調整や撮影場所の
やりとりなんかも二人で直接話して決めて、
パリで撮影しました。

初めて、肩書や仕事抜きで、
ただの女の子として出会った人に
ジャケットを撮ってもらえました。
とても自然な、縁があったという
人間的な流れで、自由を感じられる
撮影でした。
それもまたアルバムへの自信に
つながりました。

■「自分に課していたセンサーシップが
取り払われた」
――アルバムは「道」というダンサブルな
ナンバーで幕を開けます。
お母さんのこと、再婚、出産といった
活動休止中の出来事を経た宇多田さんが、
まさにいま抱いている率直な想いが
凝縮された、宣誓のような歌詞ですね。

宇多田:そう。
「私は元気です。行きますよー!!」って
感じで(笑)。
この曲の作詞の過程でアルバムの主題を
自分なりに捉えることができて、
言いたかったことが言えてスッキリとしました。

――約8年半振りということもあり、
これまでのアルバムと比べて、
声も歌詞もグッと強く、優しく、
そして大人になったという印象を受けました。

宇多田:この「道」以外はアレンジも
極力少なめのトラックにして、
声と言葉がはっきりと聴こえるように
心がけました。

「言葉が聴き取れないと意味がない」
くらいの気持ちだったので、
歌い方も前より丁寧になったと思います。

――そう思います。2曲目の「俺の彼女」という
曲はこれまでになくアダルトですね。

宇多田:これは活動休止前から温めていた
曲でした。
デモの段階では冗談半分の歌詞だったんだけど
“俺の彼女“の部分はキープしたいな
と思って(笑)。
デビューした年齢が若かったせいもあって、
活動休止前までは性に直接触れるのって
タブーな気がしていました。
エロスを匂わせることはあっても、
ダイレクトな表現は避けてきた。
でも今回からはPG13からR指定になった
というか(笑)、これまで自分に課していた
いろいろなセンサーシップ(=検閲)が
取り払われて、羽ばたくぐらい自由に
言葉を選べました。
“抱き合う“なんて言葉も自然に使えるように
なったし、“死“と“生“に向き合うことで、
エロスとは違う、“生“の然るべき一部である
“性“に初めて触れることができました。

――この曲の歌詞ではアルバムタイトル同様に
フランス語が使われています。

宇多田:何の前触れも計算もなくフランス語が
出て自分でも少し驚きました。
クールで尚かつ“艶っぽい“響きが
欲しかったのかも。
英語よりフランス語のほうが、
発声方法からして色っぽいから。
そう、ちょうどこの曲の歌詞を書き上げた
直後からアルバムタイトルを考え始めました。

――ではもういくつかの曲についても
聞かせてください。
「人魚」は、これまでの宇多田さんの
曲の中でも珍しい類の、素朴な響きを
持ったアコースティックなナンバーですね。

宇多田:母が亡くなった後、
「もう音楽を作れないかもしれない」
と思っていた頃に、ギターを弾いていたら
ふとできてしまった曲でした。

これも「美しい日本語の曲を作ろう」と
いう高い理想を持って臨んだおかげで、
作詞にすごく苦労しました。
一年ほど悩んで、理想に届かないと
あきらめかけていた時、
急にぶわっと言葉が溢(あふ)れてきました。
達成感も強くて、いま最も誇らしく
思っている曲です。

実は「花束を君に」のPV
(※切り絵作家の辻恵子さんの作品で
制作された)で、人の姿をして町で
暮らしていた女性が、突然海へ向かい、
そこへ飛び込むと本来の人魚の姿に戻るという
シーンがあるんですけど、その絵コンテを
見せていただいた時、まるで演出家さんが
私を慰めてくれているようで、
見透かされ、温かく支えられているような
感覚を覚えて、何より「花束を君に」を
受け入れてもらえたと思えて、
涙が止まりませんでした。

そこから人魚のモチーフを引き継いで
できた曲です。

――「荒野の狼」では、聴こえてくる吐息に
耳を奪われます。

宇多田:アルバム制作の終盤に、
もうネタが尽きてどうしようって時に
勢いでパッとできました(笑)。
知人とお茶をしていて、
互いにヘルマン・ヘッセが好きだという
話から「荒野のおおかみ」という小説を
思い出して、そこから歌詞につながって
いきました。

メインの歌入れが全て終わった後に取り掛かって、
この吐息でアルバム全体のレコーディングを
締め括りました(笑)。

「花束を君に」の冒頭でも、何か足したくて
吐息を入れました。
“息“を使った表現は、実はこのアルバムの
ちょっとした裏テーマでした。

■ 「こんなに「聴いてほしい!」と
思うのも初めてかもしれない」

――アルバムは「桜流し」
(映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の
テーマソング)で幕を閉じます。

宇多田:この曲は最後にしか置きようがなかった。
アルバムの曲順も、これまでは製作チームに
打診されたものをみんなで議論しながら
固めていくという感じでしたが、
今回は初めて自分で曲順を考えました。
そういう点でも、いろいろな意味で、
私自身、自分のプロジェクトのリーダーと
いう立場に進んで納まったと言える制作
となりました。

母を亡くしたことや自らが母親になったことで、
急激に大人にならざるを得なかった。

でも自分が進むべき道は誰にも教えて
もらえないけれど、自分を遮るものは
何もないんだという意識で、
必死に前へ前へと進んだ経験から、
今までにない自信を得ることができました。

――表現が直接的な歌詞もそうではない
歌詞も含めて、“お母さん“という
出発点とモチーフが通底している。
それでいて、極めて私的な全ての曲が
多くの人と共有可能な高いクオリティの
ポップソングへと結実しています。
その手腕にただただ感心させられました。

宇多田:でも“お母さん“って最もポップな
題材じゃないですか。
多分ほとんどの人にとっても、母親か、
もしくはそれに当たる存在がいるわけで、
そこから自分の核なる部分や、
自分だけの世界を形成していく。

それってめちゃくちゃポップだと思うんですよ。

――たしかにそう言われると目の前が
開ける思いです。

宇多田:だから「花束を君に」を好意的に
受け入れてもらえたんじゃないかという
気もするし。
だからいまはリスナーさんに対して、
これまでで一番強く信頼を感じています。

――では最後に。宇多田さんにとって、
『Fantome』とは、どんな存在のアルバムに
なりましたか?

宇多田:“受け入れて、受け入れられる“
アルバムでした。

セルフセラピーじゃないですけど、
自分自身「道」を繰り返し聴いているうちに
「悲しくない。もう大丈夫だ」と
思えてきました。

こんなに「聴いてほしい!」と思うのも
初めてかもしれないってくらい(笑)、
すごく聴いてほしいアルバムになりました。

何かしらの想いが届いて、
皆さんに受け入れてもらえたらうれしいです。

音楽は今後も続けていくつもりですが、
こんなアルバムはもう二度と作れない
だろうなと思っています。

(取材・文/内田正樹)

(プロフィール)

1983年米ニューヨーク生まれ。
1998年12月のデビューシングル
「Automatic/time will tell」から
ミリオンヒットを記録。
翌年3月に発表した1stアルバム
「First Love」は765万枚を売り上げ、
日本国内のアルバムセールス歴代1位を獲得。
その後リリースしたアルバムのほとんどが
ミリオンヒットを記録した。

2010年から人間活動に突入していたが、
今年4月、「花束を君に」、「真夏の通り雨」の
配信限定リリースから本格的に活動を再開させた。

9月28日、通算6枚目となるオリジナルアルバム
『Fantome』をリリースする。
※「Fantome」の「o」はサーカムフレックス付きが正式表記。

トレンドニュース(GYAO) 9月2日(金)11時0分配信


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160902-00010000-trendnewsn-musi&p=1


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