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吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか:大崎洋吉本興業社長が語った9000字 その2 [大崎洋吉本興業社長が語った9000字]

吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか:
大崎洋吉本興業社長が語った9000字 その2

漫才はアジアン・ドリーム
として成立する職業

BI:日本の小説やドラマが
グローバルなコンテンツとして
受け入れられる、という
見通しがあったのですか。

大崎:『火花』のNetflixのドラマも
実は僕、ちゃんと見てないし、
本当は本も読んでない。

Netflixは、『火花』が190カ国で
見られました、と言うてはりました。

でも、『火花』の主人公の漫才師って
日本にしかない職業。

海外に向けたハウツー本
みたいなものをつくっても
いいかなと思う。

例えば世界に知られている
「マンガ」は紙と鉛筆一本で描ける。

漫才を始めるのは、なにもいらない。

教室のすみっこにいるような、
ハンサムじゃなくても運動神経が
なくてもお金持ちでなくても
偏差値が高くなくてもできる。

アジアン・ドリームとして
成立する職業だと思うんです。

東南アジアに行った時、
若い子が
「日本のポップカルチャーが好きで、
日本語を覚えました。

私たちの国には紛争や戦争があって、
特有のカルチャーがないんです。

今からつくっていきたいから、
日本の人たちに教えて
もらいたいんです」と言っていました。

アジアン・ドリームがかない、
自己実現できる職業があるっていうのは
いいなと思ってるんです。

吉本としてチャレンジできるというのは、
社員にとっても飽きないというか、面白い。

BI:Youtubeを通して、素人という
黒船もきているのかもしれません。

大崎:情報過多だなとは思うけど、
簡単に昭和の歌謡曲もアメリカの
歌も聞ける。

そういう幸せというのもある。
ええ悪いということじゃなくて、
マーケットが決めることかなあと。

東京に出ていく根性もお金も、
そんな才能もないと思いながら、
地方でコントをやってる子もいる。

東京に行かなくても、
吉本に入らなくても、
デビューできるというのは
すごく幸せなこと。

可能性が広がっていくわけですから、
楽しい時代だと思いますね。

『火花』のドラマがアジアや世界中に
流れて、日本に漫才師という
年収10億円が稼げることもある
職業があって、いい学校を
出ていなくても、
ハンサムじゃなくても、
成功できる可能があることを
知らせることができるのは、
幸せなことだと思います。

吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか4.GIF
吉本興業の東京のオフィスには、芸人が勢揃いした
大きな記念写真が飾られている。

とりあえず「張る」ために非上場にした

BI:どんなスタイルで、
芸人をマネジメントしているのですか。

大崎:例えば、キングコングの
西野亮廣くんの絵本が売れています。

すごいらしいなって社内で言ったら、
「吉本を辞めたがっていて、
吉本批判もしているんですよね」って
聞いたんです。

「辞められたら困るよな、
頑張りや」ってマネージャーに
言いながら、ずっと気になってました。

俺がいちいち出ていくのもなあと
思いながら、展覧会があるって
聞いたから朝一番で見に行ったら、
たまたま西野くんがいてました。

「すごいな、自分吉本辞めるつもりなん、
みんな言ってるで。大丈夫か」と
話したら、
「そんなんないですよ」と。

西野くんはそんなやつです。

たぶん、僕も西野くんももっと自由で、
信頼関係もあるのだろうと思います。

ダイノジの大地洋輔くんが
エアギターの世界チャンピオンに
なったんです。

記者発表を見に行ったときに、
帰り際にダイノジに会った瞬間に
「思ったより面白くなかったな」って
言ってしまったんです。

「つまらんこと言うてしまったなあ」と、
ずっと気になってまして、
年に何回か思い出していました
。1年経ち、2年経ち、3年経ち、
4年が経ち。

ずっと気になるから謝ろうと思って。

ダイノジの2人と昼飯を予約して、
3人で会ったんです。

そのときに、
「実は謝ろうと思うててん」と
話しました。

ダイノジの大谷ノブ彦くんは、
映画評論やアニソンのDJがすごく
得意だと言うんです。

「大崎社長、知らないでしょ」と
言われて。

そんなふうにがんばってるやつが、
吉本には100人ぐらいいてると。

テレビのゴールデンで、
自分の名前がついた番組を
つくるのが目標であっても、
先輩方でそこはいっぱい。

でも、いろんな形でみんな
がんばっている。

だから、「100人みんな会うわ」と
言って、順番に会ってます。

何が当たるかわからんから、
とりあえず張っておこうかと
いうのはあるんです。

それができるように非上場にした。

外部環境がすごく変わる中で、
何がいいのかだれも分からない。

非上場にしておけば、
数字に追いかけられることなく、
小さいけれど、ほいほい張れる。

BI:当たらないときは、
どこまで我慢されるんですか。

大崎:タレントやマネージャーが
「これ、おもろいんでやりたいです」
と言ったら、おおやっとけやっとけ、
と言って。

その子らが
「ちょっともうダメです」と言ったら、
じゃあやめたらというぐらいのことで。

物差しも何もない。

だって非上場やもん。

技術取り込むための
ベンチャー投資ファンドを設立

BI:あまり細かいことは言わない。

大崎:数字だけでは、わからないからね。

どのメディアが伸びるかなんて、
誰にもわからない。

お笑いタレントのマネージャーなんて、
お笑いのことは分からないですよ。

漫才師がネタをつくってきましたと
いうときに、
「ここをこうしたらええんちゃうか」
と言えるんやったら、
「お前がやれ」という話になるでしょ。

デビュー2年、3年の子でも、
自分でつくりあげていく。

僕が言うことは何もないですよ。
あるとしたら、
「ちゃんと頭下げてや」とか、
文章の構成とか、中学生の作文
みたいなことで言うことはあるけどね。

才能は向こうにあるわけだから、
彼らが面白ければ売れるし、
面白くなければ売れない。

マネージャーは極端な話、
なにも関係がない。

彼らがやりたいと言ってきたら
「それでええんちゃうか」と
いう感じなんです。

音楽のマネージャーなら、
この楽曲がいいとか、詩がいいとか、
いろいろと言うことはある。

でも、お笑いは面白ければ売れるし、
面白くなければ売れない。

だれが見たって同じことなので、
社長の僕がマネージャーをしようが、
新入社員の子がマネージャーを
しようが、関係ない。

だから、芸人の自由にということで。

会社としての決裁権はここまでは
役員でとかそういったことは
あるけれど、基本的に自由に
やっている。

毎日学園祭をやっているような
うちの会社は、いわゆるお役所とか
銀行とは真逆のところにある。

組織として成立してはいかん
ところがある。

組織になって、レポートラインはこうで、
とか言ってしまうと、
「あかん、つぶせつぶせ」と
意識して言わないといけない。

だから、いい加減にしている。

戦略も目標設定も、
なにもないんです。

つくっちゃいかんのです。

BI:あちこちに張っておこうというのは、
会社としての投資も同じ考えなんでしょうか。

大崎:ベンチャーの会社に投資を
しようかと言っても、銀行さんや
証券会社、テレビ局には負けるわけです。

情報の収集力ではかなわない。

会社を非上場にするときに借金を
つくって、ずっと返してますから、
投資する金もない。

いまは配当も払っていないし。

でも、日進月歩の技術を何か
組み込まないといかん。

だから、そろそろベンチャーファンド
みたいなものをつくろうか、
という話をしている。

映像の制作会社もみんな
自転車操業で大変なので、
コンテンツファンドを立ち上げて、
コピーライトを取れるような
仕組みをつくらないと、
適正配分ができない。

どういう仕組みがつくれるのか、
吉本だけでつくれるんならつくる、
できないなら、どこかと
組んでやろうかと。

適正配分という問題は、
例えばレコード会社は新人の
アーティストに投資をしているから、

これだけ多くの取り分を
取るんだと言うかもしれない。

それはそれで正しいんですが、
東京を歩いていると、
大手のレコード会社や出版社は
みんな自社ビルを持っている。

うちらは東京に出てきて20年、
30年経つけど、いまだに
自社ビルじゃない。

新喜劇のけいこが遅くなったら、
1000円の弁当代を800円にせえとか、
そんなことをずっとやっている。

でも向こうは自社ビルだ、
すごいなあと感心するんです。

でもこれは、演者やクリエーターに
とっての適正配分なのか。

新しいメディアが来た時に、
もう一度、適正配分を目指して
チャレンジをしたいなあと
密かには思っているんです。

適正配分できる国産プラットフォームを

BI:ネットも、コンテンツを
つくる人に、お金が回らない
仕組みがあるのかもしれません。

大崎:松本人志が週刊朝日で
連載していた『遺書』が書籍に
なった時に、契約に行くと、
印税は◯◯%ですと言われたんです。

なんやそれと。

出版の仕組みを分かっていないから、
そんなに著者の取り分が低いって
知らなくて、
「もうちょっと何とかなりませんかね」と、
ずっとやり取りをした。

そのとき、司馬遼太郎さんの印税を
聞いたら、それも低かった。

8割とちゃうんや、と笑ってしまった。

「じゃあ、司馬遼太郎さんと
一緒にしてください。
ただし、万が一100万部売れたら
プラスいくら、200万部売れたら
プラスいくら、というふうにして
くれませんか」という交渉をしました。

『ダウンタウンのガキの
使いやあらへんで』の
ビデオを出すというときに、
担当の人と話をすると、
演者の取り分は◯◯%ですと
言うんです。

えんえんと交渉を続けて、
結局2年ぐらいかかって、
◯◯%になって、
また何本売れたらいくら、
という契約をした。

結局10倍ぐらいの取り分になった。

「世の中ってこんな仕組みに
なっとるんやな」と。

だから出版社もレコード会社も
テレビ局も自社ビルがあって、
僕らはいまだに間借りなんやなと。

大人ってこんな仕組みを
つくってるんやなあと。

NetflixやAmazonがやってきた。

これも、適正配分かどうかは分からない。

だから、一番いいのは、
国産のプラットフォームをつくること。

20世紀、映画や音楽ビジネスの
システムをつくり上げた
アメリカに負け、
21世紀にもまたアメリカに負けて、
中国にも負けて。

国産のプラットフォームは
ニコニコ動画とAbemaTVぐらいしかない。

このまま行けば、21世紀はまた、
日本はカルチャー・エンタテイメントで
敗戦になる。

もう遅いんでしょうか。

吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか5.GIF

テレビもビデオも本もガラガラポンと
変わる時代です。

だからもう一度、適正配分とは
なにかということをみんなで考えたい。

みんなが幸せに食べていけるように
なる最後のチャンスかもしれない。

そのために、国産のプラットフォームを
持って、世界と戦い、仲良くもしたいなあ。

負け戦かもしれないけれど、
なんとかこの2、3年でもう
一度勝負をかけないといけない。

本当は、NTTさんやKDDIさんや
トヨタ自動車さんがやることかも
しれないけれど、小さな小さな
チャレンジぐらいは、
この2、3年で吉本がしないと
いけないんじゃないかなと。

金はないけど張るふりをして、
NetflixさんやAmazonさんと一緒にやる。

相手を知らないと勝てませんから。

でもね、いよいよ勝てないと
分かったら、こう言おうと思うんです。

「昔から友達やったやん」

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大崎洋(おおさき・ひろし)
1953年生まれ、大阪府堺市出身。

関西大学を卒業し、1978年4月に
吉本興業に入社。
お笑い芸人のマネージャーや、
吉本興業の劇場を担当した後、
東京の事務所などに勤務。

ダウンタウンの全国的なブレイクに
大きな役割を果たした。

2009年4月に吉本興業の社長に就任した。

(取材と文:小島寛明、浜田敬子)

BUSINESS INSIDER JAPAN10/7(土) 12:10配信

最終更新:10/7(土) 18:57

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171007-00010002-binsider-sci&p=5
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