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吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか:大崎洋吉本興業社長が語った9000字 その1 [吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだの]

吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか:
大崎洋吉本興業社長が語った9000字 その1

吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか.GIF

吉本興業がネット動画で攻めている。

Netflixで配信したドラマ『火花』は
世界190カ国で視聴され、
明石家さんま、松本人志、浜田雅功ら
大物芸人が続々とAmazonや
Netflixに活動の場を広げている。

アメリカからやってきた動画配信の
黒船は、制作現場に何をもたらして
いるのだろうか。

大崎洋社長がBusiness Insider Japanに
語った90分。

Business Insider Japan(BI):
NetflixやAmazonで、次々に吉本興業の
動画コンテンツを制作しています。
きっかけは。

大崎洋・吉本興業社長(大崎):
実は、Netflixの人たちとは
1回食事しただけで、Amazonの人とは
会ったことがないんです。

二十数年前、インターネットが
出てきたころだったかな、
新しいメディアの黒船がアメリカから
来るのかな、ひょっとしたら中国からも
赤船が来るんと違うかなと、
ぼやっと思っていました。

その頃から黒船と赤船のへさきの
先頭に立って、こっちこっちと
水先案内をしたら、会社は生き残れる
かもしれないなと。

日本独特のソフトパワーがあるとする
ならば、新しいタレントマネジメントの
方法や、コンテンツマネジメントの
方法があるはずだし、
それを身につければ、
吉本は生き延びられるんじゃないかなと
思っていました。

その時代の“適正配分”みたいなものを、
もう一度「えいや」で考え直して、
外に出る体制をつくれたらと。

国産の(動画を配信するような)
インフラはまだないから、
海外のものに乗っかって、
もう少しソフトパワーを持てば、
適正配分に近くなって対抗できるん
じゃないかなと、ぼやっと思っていました。

僕が考える適正配分とは、
支払われるべきところに、
きちんとお金が落ちること。

インターネットが普及し始めた当初から、
インフラのコストはすごく安くなると
言われていました。

テレビはインフラ整備にかなりの
お金がかかる。

インターネットならそのコストが
ものすごく安くなるというのを
何かで読み、いつか黒船か赤船が
来るんだろうなあと個人的に
思っていました。

うちの副社長のおかもっちゃん
(岡本昭彦副社長)とは、
「おかもっちゃん、
絶対そうなるからな。
ここで踏ん張らないと、
吉本は100年を迎えられへん」と
話してました。

ファミマのアジア進出の時にも「お前行ってこい」

吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか1.GIF
吉本興業の大﨑洋社長。「芸人は、
アジアンドリームとして成立する職業」と語る。


BI:吉本興業はテレビ、インターネット、
携帯電話と時代に応じたコンテンツの
売り方を常に考えて来たようにみえます。

大崎:深い考えや、戦術・戦略があった
わけでもなくて、良くも悪くも、いつも、
ちょっとやっとこうかぐらいのことなんです。

任天堂さんがゲーム機に動画の配信をすると
いうニュースを、たまたま新幹線の中で
朝刊で読んで、ガラケーで写メを撮って、
おかもっちゃんに、
「おれ、任天堂の人はだれも知らんけど、
おまえとりあえず行ってこい」と。

ファミリーマートさんがアジアに
進出したときも、記事を携帯で
カシャっと撮って、
「お前、とりあえず行ってこい」と
送り込むみたいなことをずっと
やってきました。

BI:エンタメ、メディア業界以外の
会社の動向も見ているわけですか。

大崎:勝手に、コンビニも一つの
メディアと考えて、吉本として
何かできるかなと。

BI:中国には早くから取り組まれています。

大崎:サラリーマン生活40年くらいで、
27、28年前から回数でいうと500回
くらい中国に行ってるんです。
実績はゼロなんですけど。

日本で仕事をしてるとね、
フジテレビさんに行っても、
社内の同期や先輩や後輩と
(自分の担当している芸人が
番組出演などで)バッティングする。

それがいやでね、終わったら同じ釜の飯を
食う仲間なのに。

テレビの企画部が深夜の司会を
探していることを聞いた時に、
本当なら同期の子に
「フジテレビで探してるよ、
行ったほうがいいんちゃうか」と
言わないかんのですが、
自分だけにしとくみたいなのが、
なんか嫌だなあと思っていて。
誰ともバッティングしない
ところで仕事したほうが健全と
いうか、のびのびとできるん
じゃないかと思って、
アジアに行けばいいのかなと。

BI:東京に事務所がなかった時代から、
新しい市場を開拓する仕事を東京で
続けてこられたことが影響して
いるのでしょうか。


吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか3.GIF
東京・新宿にある東京本部の廊下に立つ大﨑洋社長。
廃校になった小学校の校舎をオフィスにしている。

大崎:当時の吉本興業は大阪だけの
会社で十分やと、劇場で日銭を稼いで、
芸人さんを面倒みながらやったら
ええんやと、東京なんて行かんでも
いいという時代でした。

社内では島流しと言われてね。

東京は連絡事務所の位置付けで、
要するにお前たちは判断するなと。

連絡係だぞと。

大阪のなんば花月やうめだ花月、
京都花月の出番を休んで、
東京のテレビ局に出すのはならん、
あり得ないという時代でした。

カチャカチャにボタンついてるのはすごいなあ

BI:Netflixで配信した『火花』は、
本格的にデジタルコンテンツの動画の
展開をしていくきっかけとなった
作品でしたか。

大崎:その前に、YNNとかいってCNNを
パクった動画を作ったりとか、
ちらちらやってました。

もちろん赤字。本当に小さな小さな
ところから始めたという感じなんです。

BI:『火花』の映像化はたくさんの
オファーがあったのでしょうか。

大崎:岡本くんに聞くと
「いっぱい来てますよ」って。

放送局さんに持っていくと
「じゃあ、うちがつくってやるから、
ギャラいくらくらいほしいの」と
いう感じなんです。

岡本くんと、そりゃつまんないなと
思っていて。

そんな時に、制作費もそれなりに
もらえて、ある程度こちらで
コントロールできて、
もちろんネット技術として
世界に通用するための構成とか
ストーリーテリングとか
ノウハウを全部教えてもらいながら
こちらで作れると。

じゃあ、それが一番いいんかなと。

吉本が地上波のドラマをつくりたいと
言っても、(テレビ局は)来年、
再来年まで制作するドラマは
決まっているとも言われます。

吉本が東京まで来て、
お笑いだけじゃなくドラマ
にも入っていくとなると、
すべての制作会社や
芸能事務所から反感をくらう。

だから、こじ開けようと思わなかったし、
こじ開けられなかったかもしれない。

そういう時に、Netflixの話があった。

BI:それまで、Netflixは見たことが
ありましたか。

大崎:何かで読んで、
「Netflixっていうのはテレビの
カチャカチャ
(編集部注:リモコンのこと)の
ところにボタンがついてるらしいで」って
おかもっちゃんに言って。

おかもっちゃんがどこかの電気屋さんに
行って「本当に付いてましたー」って。
あっそう、すごいなーって。
テレビのカチャカチャについてるってのは、
すごいなあNetflixって。

まあ他人事のように。

制作会社を育てなかったテレビ局の罪

BI:Netflixは、制作費が日本の
テレビ局とはひと桁違うとも言われます。

大崎:そんなことはないです。
ケースバイケースだけれど、
1本につき1500万から2500万円程度。

いい時の地上波のプラスαぐらいかな。

その前に、アメリカのドラマが
1本1億で作るらしいって何かで読んで、
岡本くんに
「アメリカのドラマって1本1億円で
作るらしい、そうすると映画より高いな」
と話してました。

ワールドワイドなネットワークがあるから、
制作費が100億の映画でも1800円の
チケットで世界中に見てもらえる。

そんなシステムをアメリカは持っている。

だから、Netflixにはこっちから
訪ねていったんです。

おかもっちゃんが量販店に行って、
テレビのリモコンに
「ボタン、本当についてました」と
言っていたときに、
「行ってこい行ってこい」って。

BI:『火花』の話の前のことですか。

大崎:前です。ドラマを作りましょうか
みたいな話は、ぼわっとしていました。

Netflixは具体的な数字は教えて
くれないんです。

190カ国で見られています。

(日本のコンテンツも)50%強が
海外で見られてます、
みたいなことは教えてくれるけど、
細かいことはまったく教えてくれません。

ただ、ケースバイケースですけど、
3年後、5年後、10年後に著作権は
吉本に戻ってきて、
配信やマーチャンダイズが
こちらでできるという強みがあります。

日本は制作会社が下請けと
位置付けられているから、
制作会社が育たない。

制作会社を育てていれば、
もっと日本のテレビ業界も
変わったんじゃないですか。

それはアニメもしかり。

いままでは出口がテレビしかなかった
のが原因だと思います。

お笑いも僕もテレビと一緒に
育ってきました。

僕は、テレビは大好きだし、
テレビしか知らない。

でも、功罪相半ばと言うところだと
思います。

映像も製造販売直販で中抜きになる時代

吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか2.GIF

BI:Netflixは本来、
吉本にとってライバルなのでは。

大崎:基本的にはそうですね。
本来なら、60年お世話になってる
テレビ局さんと共にあるのが
一番幸せな形です。

それ以上でもそれ以下でもない。

でも、自由にやらせていただくのならば、
ちょっとやってみようかなと。

BI:Netflixでドラマを制作すること
自体が、業界の仕組みに挑戦する
行為にもみえます。


大崎:いいか悪いかは別として、
出口を押さえて、中抜きを飛ばして、
製造販売直販だっていう世の中に
なっていく中で、映像カルチャーも
そうならざるを得ないのは当然の
流れでしょう。

BI:日本のテレビの制作現場の
苦境を感じますか。

大崎:吉本興業は、売上のほとんどが
テレビ局さん。

AD(アシスタント・ディレクター)さんを
3K(編集部注:きつい、汚い、危険。
最近では、帰れない、厳しい、
給与が安い、とも)と言ってた時期が
あったじゃないですか。

テレビで3K、3Kと言っていたら、
そんなところには、いい人材なんてこない。

ADは本来、将来の演出家たちです。

それから、1分ごとに視聴率を測っていて、
だれのトークで上がった下がったという
物差しで、すべての放送局が
番組を制作した。

例えば、ある女優さんを出すと
視聴率が上がるとか。

同じようなものばかりがつくられる
ようになった。

現場の芸能事務所からすると、
今思えば、ADを大事にせず、
分計で視聴率をとったことが、
違っていたんじゃないかと。

資本主義の世の中で株式会社
だから仕方がない面もあるけど、
新聞も発行部数だけで
測っていていいのか、と思うね。

自由と適正配分と市場規模と
インフラコストゼロ

BI:Netflix、Amazonでは作りたいものが
作れていますか。

大崎:制作の自由度が高いこと、
適正配分がなされること、
マーケットの規模が大きいこと、
インフラの費用がかからないこと。

これらが大きいと思う。

BI:表現の自由の幅は違いますか。

大崎:表現する者にとって自由な場と
いうのは大きい。

それは、編集者もライターも、
みんな一緒じゃないですか。

BI:NetflixとAmazonに違いはありますか。

大崎:その辺が良く分かっていないんです。

Amazonの方とはどっかで会ったと
思うんですけど、記憶がないんです。

おかもっちゃんと担当の人たちが
やってくれた。

BI:吉本、例えば松本人志さんが
作る作品は世界で受け入れられると
思いますか。

大崎:それは本当に分からないけれども、
松本と出会った時に、すごい才能が
あるんだなって思って。

笑いって言葉の壁があって、
なかなか受け入れられないけれども、
出ていけるんじゃないかなとは
漠然とは思ってたんです。

松本がどう思ってるかは分からないけどね。

いつか行ってやろうとは思ってましたが、
まさかこんな形でとは思ってなかったし、
Amazonでつくった『ドキュメンタル』の
フォーマットが海外でいま売れそうに
なっている。

例えば、インドのコメディアンが
自由に集まって笑かしあいをするとなったら、
ちょっと見てみたい。

インド人は密室で、
どんな笑かしあいをするんかなあと。

こういう広がり方ってあるんだ
なあと思います。

それをまた、松本とインドの
芸人でやったらどうなるかなとか、
日本とインドの対抗戦をやっても
面白いかもしれない。

中国でも、フランスでも見てみたい。

松本が考えた企画が言葉の壁を越えて、
コンテンツも外へ出ていくように
なるんじゃないかなって思います。

最終更新:10/7(土) 18:57
BUSINESS INSIDER JAPAN10/7(土) 12:10配信



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