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演出家・福田雄一、ゴールデン初進出『スーパーサラリーマン左江内氏』で“マスとコア”の狭間での葛藤 [演出家・福田雄一、ゴールデン初進出の葛藤]

演出家・福田雄一、ゴールデン初進出
『スーパーサラリーマン左江内氏』で
“マスとコア”の狭間での葛藤

演出家・福田雄一.GIF

今期の連続ドラマのなかで、
脱力系のコメディタッチで異彩を放つ
『スーパーサラリーマン左江内氏』
(日本テレビ系)。

その脚本・演出を手がけているのは、
今一番忙しいクリエイターと
言われる売れっ子・福田雄一氏。

『勇者ヨシヒコ』シリーズや
『アオイホノオ』
(テレビ東京系)など
深夜ドラマでコアな人気を呼んだ
手法をそのまま土曜21時の
ゴールデンタイムに持ち込み、
一般層向けの実験作として
注目されている。

◆とぼけたユルさが独特な味わいを
醸し出す福田雄一作品

福田氏は1990年に
劇団『ブラボーカンパニー』
を旗揚げし、
座長として構成・演出を担当。

また、放送作家として
『笑っていいとも!』
(フジテレビ系)などの
バラエティに携わり、
ドラマや映画の脚本でも
腕をふるった。

そんな福田氏が広く知られる
きっかけになったのが、
演出も担当した堂本剛主演の
深夜ドラマ『33分探偵』
(フジテレビ系/2008年)。

誰が見ても犯人が明らかな事件を、
ドラマの本編尺である
33分間もたせようと、
探偵が見当違いの推理を
繰り広げる。

結局は最初からわかっていた
犯人にたどり着くという、
脱力系ミステリーだった。

その後も、
“予算の少ない冒険活劇”を
謳った山田孝之主演の
『勇者ヨシヒコと魔王の城』
(テレビ東京系/2011年)では、
『ドラゴンクエスト』ふうの
ベタな魔王退治の旅を描いて
シリーズ化。

鈴木福主演の『コドモ警察』
(TBS・MBS系/2012年)は
エリート刑事たちが特殊ガスで
子どもになってしまった設定で、
小学校にも通うチビッコが往年の
『太陽にほえろ!』
(日本テレビ系)ふうの
いでたちで事件を追うギャップが
笑いを誘い、映画化もされた。

こうした良い意味の
“くだらない”ストーリーで、
とぼけたユルさが独特な味わいを
醸し出すのが福田作品の特徴。

ギャグやパロディも随所に盛り込まれ、
脇を固めた個性派俳優のムロツヨシや
佐藤二朗の魅力も引き出した。

深夜帯で支持されたこの手法で、
演出も手がける作品としては
初めてゴールデンタイムに
挑んだのが
『スーパーサラリーマン左江内氏』だ。

◆ギャグ、パロディ、小ネタ…
深夜ドラマの作風をそのまま
ゴールデンタイムへ

同作の原作は、藤子・F・不二雄の
マンガ。

家では恐妻家、会社では万年係長で
責任逃れに走る左江内(堤真一)が、
見知らぬ老人から
「スーパーヒーローにならないか?」
としつこく誘われる。

出勤前に娘が忘れた弁当を届けるため、
特殊能力が使えるスーパースーツを
借りて空を飛んで以来、嫌々ながら
人助けを続けることに。

スーパーマンふうのマント衣裳に
身を包んだ堤の姿はおかしいが、
スーツには彼を見た人々の
記憶を消す力もあり、
事件を解決すると遅れて
駆け付けた小池刑事(ムロツヨシ)の
手柄になる。

これまでの深夜ドラマ作品と
変わらぬ福田テイストの
“くだらない”展開だ。

5話では左江内が上司の
簑島課長(高橋克実)と
元部下の藤崎(本田翼)の
不倫に巻き込まれ、堤と本田が居酒屋で
「課長が好きだったのに」
「ハゲでも?」
「ハゲ好きなんです。
ドラえもんに似てません?」
「似てないよ」と微妙に笑える
会話を交わしたり、
左江内の夢のなかで、
鬼嫁役の小泉今日子が極道の妻ふうの
着物姿で「浮気しよったじゃろが!
 死んでもらうけえの」と
刃物を刺してきたり。

相変わらず小ネタも満載だ。

ムロとともに福田作品常連の佐藤二朗も、
フリーター役で毎回出演。

占い師として左江内に
「女難の相がある」と告げ、
「若い頃にはブランド品ばかり身に
つけたCAと恋をして、
えらいめにあっただろう」などと、
堤が出演していた
『やまとなでしこ』
(フジテレビ系)の
ネタも入れ込んでいた。

深夜ドラマでの作風を
ゴールデンタイムでもアレンジせず、
そのまま用いている『左江内氏』。

クスクス笑えるコメディになっているが、
視聴率は初回12.9%で以降ほぼ
9%台と揺れず、評価は微妙なところ。

しかし、下降傾向とは言い切れず、
5話では数字を上げ、再び2ケタに
向かう流れも見える。

◆マス向けへの葛藤も?
今もっとも忙しいクリエイターへの期待

感想サイトでは
「くだらないドラマの極致で
クセになる」

「ゆる~い感じが1週間の疲れを
癒してくれる」といった賞賛の一方、

「最初はおもしろいと思ったけど、
くだらなくなってきた」

「左江内氏の家族がブラックすぎる」
といった声も。

ひとつのゴールへ向かうような
わかりやすさがないと、
昨今のドラマは視聴が
習慣化しにくい傾向があり、
その意味では時流にそぐわないとも
言えるかもしれない。

とはいえ、2ケタに乗ればヒットと
言われる閉塞状況のドラマ界で、
ゴールデンタイムでも変に
マス狙いを意識せず、
独自路線を貫くのは果敢な
チャレンジであることは間違いない。

少なくとも従来からの福田ファンを
失望させてはいない。

福田氏はドラマのほか、
今年公開の映画『銀魂』
『斉木楠雄のΨ難』で監督を務め、
舞台『ヤングフランケンシュタイン』の
脚本・演出も手がけたりと、
次々とメジャーシーンの大作を
任されている。

アメリカンコメディをベースとした
才能が各方面から絶賛を受けている
証左だ。

ゴールデンタイムのテレビドラマという
もっともマスなところで、
『左江内氏』は順風満帆なスタートとは
いかなかったが、
これからもエンタテインメントシーンの
期待を背負った福田氏のマスへ向けた
挑戦は続く。

アクの強さが人気につながる
“コア向け”と、万人に
わかりやすく共感を得られることが
必要な“マス向けと”は、
作風的に相反するところもある。

『33分探偵』でのフジテレビの
インタビューで福田氏は
「ドラマはある程度の約束事や
決まり事がある。
サスペンスドラマには
サスペンスドラマの“定型”があって、
それがあるがゆえに
『こんなに崩しちゃってます』と
いう遊び感が出せた」と
コメントしているが、
深夜ドラマならではの枠を
崩せる自由さを楽しんでいた。

そんなところがこれまでコア層の
熱烈な支持を受けてきた福田氏は、
今回のドラマに携わりながら、
マスに向けた見せ方とのはざまでの
葛藤もあることだろう。

しかし、作風は異なるものの
堤幸彦氏や宮藤官九郎氏らは
もともとのコアから一般向けへの
舵切りに成功し、どちらの層も
取り込むヒットを生み出している。

今もっとも忙しいクリエイターと
言われる福田氏も、その系譜の
ひとりに名を連ねていくことが
期待されている。

ゴールデン初進出の結果が
出るのはこれからだが、
それを経た次の展開にも
注目が集まっている。

(文:斉藤貴志)

オリコン 2/18(土) 8:40配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170217-00000358-oric-ent


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