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大手芸能事務所に支配された「平成テレビドラマ全史」 [大手芸能事務所が支配テレビドラマ全史]

大手芸能事務所に支配された
「平成テレビドラマ全史」

「平成テレビドラマ全史」.GIF
iStock

きっかけは『ビーチボーイズ』

<なぜ日本のテレビドラマには、
海外のように大人の鑑賞に堪える
作り込まれた作品が少ないのか?

なぜ近年では、一部を除いて
ほとんどのテレビドラマが、
低視聴率にあえいでいるのか?

多くの人が感じているこの
疑問を解き明かす、
ノンフィクション作家・田崎健太氏の
内幕レポート。

前編に引き続き、後編では芸能事務所と
テレビ局の力関係の変化を、
過去27年間にわたるドラマの
具体的データにもとづいて
明らかにする。>


前編で登場したテレビプロデューサーは、
日本のテレビドラマが「利権主義」に
大きく舵を切ったのは1990年代後半
ではないかと推測する。

一つのきっかけは97年の
『ビーチボーイズ』
(フジテレビ系)だったようだ。

反町隆史と竹野内豊という、
大手プロダクション
「研音」所属の二人の
人気俳優が主演を務めた
ヒット作である。

「このドラマの主題歌を反町が
歌っている。

主題歌が売れれば当然、
プロダクションに金が入ることになる。

主題歌はドラマの印象を決める
大事な要素だから、それまでは
制作側にどの主題歌を選ぶのかと
いう主導権があった。

それが、研音がそうした
ビジネスに手を出したために、
それ以降はジャニーズ事務所も
『自分たちもそうする』と言い出した」

プロダクションにとって、
自らが音楽出版権を持つ
所属タレントの楽曲は
重要な収入源である。

いわゆるタイアップビジネスだ。

タイアップが増加し始めてから、
テレビドラマの世界は徐々に
変質してゆく。

作品とキャスト、そして視聴率の
関係を具体的に見てゆこう。

上記の一覧は、1990年以降の民放の
テレビドラマを最高視聴率順に
ランキングにしたものである。

90年代前半、
『101回目のプロポーズ』
(91年・フジテレビ系)、
『ずっとあなたが好きだった』
(92年・TBS系)、
『ひとつ屋根の下』
(93年・フジテレビ系)、
『家なき子』
(94年・日本テレビ系)と、
視聴率トップのドラマは毎年のように
「社会現象」ともいえるブームを
巻き起こした。

当時はこれらを含めて、
ほとんどの作品で専業俳優が
メインキャストを務めている。

しかし、95年にジャニーズ事務所
所属の堂本剛(KinKi Kids)が
主演する
『金田一少年の事件簿(第1シリーズ)』
(日本テレビ系)が視聴率首位を
獲得して以降、徐々に様相が
変わってゆく。

翌96年には木村拓哉(SMAP)主演の
『ロングバケーション』
(フジテレビ系)、
同じく木村が準主役の
『協奏曲』(TBS系)、
そして『金田一少年の事件簿
(第2シリーズ)』が1位、2位、
4位に入っている。

なお、98年の『GTO』でも、
前述した『ビーチボーイズ』同様に、
主演の反町隆史が歌う楽曲が
主題歌に採用されている。

「主題歌を主演タレントの曲にする」
といった付帯条件で譲歩したとしても、
テレビ局側としては視聴率を取るために、
ジャニーズ事務所や大手事務所に
所属するタレントを起用したい。

以降、大手芸能事務所がテレビドラマの
世界で強い影響力を保持して
いくことになる。

主題歌で儲けるビジネスの功罪

2000年代に入ると、
04年にはトップ3作品の主演が
全てSMAPのメンバーとなった。

また、『僕の生きる道』
(03年・フジテレビ系)で
SMAPの『世界に一つだけの花』、
『マイ ボス マイ ヒーロー』
(06年、日本テレビ系)で
TOKIOの『宙船』、
『花より男子2』
(07年、TBS系)で
嵐の『Love so sweet』、
『ガリレオ』
(07年、フジテレビ系)で
KOH+(柴咲コウ)の
『キスして』がそれぞれ主題歌に
なるなど、主演俳優がドラマの
主題歌も歌う作品が視聴率上位の
常連となってゆく。

前出のテレビプロデューサーによると、
このようなビジネスモデルの
変化を経て、プロダクション側が
完全にキャスティングの主導権を
握ることになったという。

「ジャニーズ事務所などの人気タレントは、
1年前からスケジュールを押さえ
なければならない。

その上、プロダクション側がこの俳優で、
こういうストーリーでドラマをやりたいと
いう提案をしてくる。

テレビ局側はそれに従って、
脚本家や監督に話を振る。

ただ、餅は餅屋。

どんな役柄を与えればその俳優が
生きるかというのは、
プロダクションの人間よりも
自分たちの方が冷静に見ている。

それにもかかわらず、
プロダクション側の意向に
従わざるをえないので、
くだらないドラマが量産される」

ジャニーズ所属のタレントに限らず、
こうして出演する「俳優」たちは、
演技の訓練を積んでいない場合もある。

脚本家の西岡琢也はこう嘆く。

「昨日までモデルをやっていたような
女の子が、今日から女優ですっていう
ことがある。

テレビ局側もそういう人をポンと使う。

あるいは誰々の息子、娘という
話題性のある人間。

まずはテレビコマーシャルに起用して、
それからドラマにはめ込む。

芝居の勉強なんてしてないですよ」

また、視聴率の取れる「俳優」に
ついては、時間的な制約も大きいと
西岡は言う。

「現場スタッフは腫れ物に触るように、
『忙しい中、よく来てくださいました』と
いう態度。

そして、9時に来たのに
『今日は絶対に10時に(現場から)
出してくれ』というような要求が
マネージャーからある。

そんな中で芝居なんかできないですよ。

単に『芝居らしきもの』を
やっているだけ。

現場は作品の質を上げることよりも、
いかに俳優の機嫌を損ねないかと
いうことばかり気を遣っている」

かつて連続テレビドラマには、
4クール1年間、あるいは半年間という
長編の作品も多かった。

しかし、現在はほとんどが
1クール3ヵ月になっている。

これも撮影で長期間拘束されることを
嫌がる、プロダクションと
俳優側の都合だという。

「こちらからすれば仕事があるん
だからいいじゃないか、と
思うんですけど、知名度のある
役者にとっては嫌みたいです。

ですから、テレビ局も3ヵ月ごとに
新しい企画を出さなきゃいけない。

どう考えても追いつかないから、
安易に漫画や小説を読んで
原作になりそうなものを
探そうとする」

説明するのがドラマなのか?

また題材についても、事務所や
プロダクションがスポンサーの意向を
「忖度」する傾向があると
西岡は続ける。

「これはぼくの経験なんですが、
例えば戦争物のドラマをやるとき、
最近は出演交渉しても断られてしまう。

単なる反戦平和を唱えるだけならば
ともかく、戦争を背景に人間の
いろんな面を描くとなると、
入り組んだストーリーになってしまう。

そういうのは軒並みNG。

ある時、女優さんに4人も5人も
出演を断られたので、どうして
だろうと思って調べて見ると、
スポンサー絡みで
『思想的な色を出したくない』という。

それがCMの契約に含まれているのか、
あるいは自己検閲なのかは
分かりませんが。

売れっ子であるほど、
テレビCMに出ているので、
複雑なテーマの作品には
出てくれない。

視聴率も期待できないから、
結局、こんな企画はやめようと
いう話になる」

さらに大人の鑑賞に堪えないドラマが
多くなった原因として、脚本家の
坂田義和は、演出方法がどんどん
幼稚になっていることを指摘する。

「あるシーンで、女性2人が喫茶店で
話をしているとします。

脚本家のイロハとして、
この2人はどんな関係性なのか、
いかに説明的にならずに
視聴者に分かってもらえるかが大切。

2人が姉妹ならば『お姉さん』という
言葉を台詞のどこで入れるか
考えるわけです。

ところが、今のドラマではいきなり
『誰々の妻・○○』というように、
画面にテロップが出て来る。

そのくらい、テレビ局は視聴者を
馬鹿だと思っている。

全部文字で説明するのがいい
ドラマなんだと。

プロデューサーというのは
そういうことばかり考えている」

これでは配信に負ける日が来る

加えて近年は、テレビ局側が監督、
脚本家の作家性を薄くしようとする
傾向があるというのは、
やはり脚本家の柏原寛司である。

「勝(新太郎)さん、
(松田)優作、
ショーケン(萩原健一)と、
自分はホン(脚本)を変える
役者とばかりやってきた。

だから書き換えられることは
気にしない。

ただ、昔は誰々の作品であるという
作家性を重要視してくれた。

今はその色を消したがっている。

テレビドラマの場合はとくに、
作品を監督や脚本家の
ものにしたくない、
テレビ局のものにしたいから、
わざと各話で違った
監督、脚本家を使う。

昔は石原プロダクション、
勝プロダクションといった
制作会社がドラマの
権利を持っていた。

今は、制作会社は単なる下請けで、
権利は全てテレビ局が持っている。

テレビ局の力がどんどん強くなって、
指示通りに従わないと
下請けから外される」

監督、脚本家の作家性が消され、
組織の人間であるテレビ局員たちが
コントロールしやすい
無難なドラマばかりになる――。

柏原が言う「ドラマの権利」とは、
DVD化、再放送などの二次・三次
使用権を指す。

しかし、世界の市場で売ることを
見据えている欧米や韓国などの
海外ドラマと異なり、
日本のテレビドラマではそれ以上の
商業展開が考えられていないことは、
前編で触れた通りである。

今は、制作会社は単なる下請けで、
権利は全てテレビ局が持っている。

そんな中、Netflix、Amazonといった
企業が制作・配信する
インターネットドラマがひとつの
光明になりつつある。

ただし脚本料で言えば、
支払われる報酬は地上波の
5~6割ほどにとどまっているという。

さらに権利関係についても、
脚本家などの制作関係者に
二次使用料が支払われない
「買取り」になる作品が
少なくない上、
外資系企業のため権利交渉の
主体もはっきりしないなど、
まだ不透明な部分が多い。 

そもそも、
地上波テレビに関しては
ドラマの枠そのものが
減っている。

制作費が安く、
視聴率の「獲れ高」が
ある程度事前に計算できる、
バラエティやお笑い番組が
増えているのだ。

日本のテレビドラマは、
現在もガラパゴス化と
縮小を続けている。

もちろん、制作現場には良質の
ドラマを送りだそうと歯を
食いしばっている
人間はいるだろう。

また、
「プロダクションの後押し」で
演技の世界に入ったとしても、
その面白さに気がつき、
努力を重ねている俳優も存在する。

そして、
他国との比較で言えば、
アメリカの
オーディションシステムも
完全に平等ではない。

なにより「日本のテレビドラマ」と
一括りにすることが荒っぽいことは
自覚している。

ただ、本稿で指摘したような状況は、
ほとんどの関係者は認識して
いたはずだ。

そして声を上げると仕事や立場を失う、
そんな息苦しさがあったことは
間違いない。

今後、ドラマとプロダクション、
そしてテレビ局の関係について
闊達な議論が起きることを
期待している。

日本でも大人が楽しめる面白い
ドラマが作れないはずがないのだ。

田崎 健太


現代ビジネス9/10(日) 13:00配信


最終更新:9/10(日) 18:00

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