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Suchmosの「STAY TUNE」とホンダが証明したCMタイアップの底力 [Suchmosとホンダが証明したCMタイアップ]

Suchmosの「STAY TUNE」と
ホンダが証明したCMタイアップの底力

Suchmos.GIF

「これはすごいことになってるな」と
気づいたのは、年明けの
iTunesソングチャートを見た時だった。

例年その時期は紅白歌合戦をはじめと
する年末の音楽番組で披露された
「2016年を代表する曲」が
ヒットチャートの上位を占めるもの
なのだが、そんな慣習とはまったく
無縁のSuchmosの「STAY TUNE」が
昨年の秋からジワジワとチャートを
上がって、遂には2位
(1月9日、10日)にランクしていたのだ。

その時点の1位は星野源「恋」で
3位はRADWIMPS「前前前世」だといえば、
それがどれだけの快挙かおわかり
いただけるだろう。

ちなみに「STAY TUNE」は
SuchmosのセカンドEP『LOVE&VICE』に
収録されていた曲。

CDがリリースされたのは
2016年1月27日だから、
そこから約1年かけて「恋」や「前前前世」と
いった「2016年を代表する曲」に
肩を並べたわけである。

ヒットの理由だけなら、
「あー、あのホンダのCMの曲ね」と
誰もが指摘できるだろう。

「STAY TUNE」が使用されている
ホンダ・ヴェゼルのテレビCMの
オンエアが始まったのは昨年9月だが、
年末から正月にかけて集中的に
オンエアされたことで、
楽曲の認知が一気に広がっていった。

資生堂やカネボウの季節ごとのCMソングが
『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』
などの歌番組を賑わせていた80年代や、
B’zやZARDといったビーイング系の
アーティストがカメリヤダイアモンドや
ポカリスウェットのCMタイアップで
次々にヒットしていた90年代ならいざ知らず、
2017年においてもまだCMのタイアップが
有効であることをSuchmosとホンダは
証明してみせた。

CM制作現場では大ヒットの話題で持ちきり

最近は暗い話題の多い広告業界だが、
テレビCMの制作にたずさわっている
知人に何人かリサーチしてみたところ、
実際ここ数週間、制作現場では
「STAY TUNE」大ヒットの話題で
持ちきりだったという。

ちなみに肝心の商品へのCM効果という点でも、
ホンダ・ヴェゼルは販売開始から既に
3年が経っているにもかかわらず、
前年比を上回る売上を記録し続けている。

何よりもテレビCMを作っている当事者たちが、
タイアップ・ソングがハマった時の
ポテンシャルに驚かされている状況のようだ。

確かに。

ここ10年くらい、特にクルマのCMでは
「若者の車離れ」という世間の風評に
流されるように「今、流行ってる音楽」の
起用が極端に減っていた。

テレビから流れてくるのは
「いつの時代だよ!」と言いたくなる
古い洋楽曲や、山下達郎、大瀧詠一、
スピッツ、Dreams Come Trueらの曲を
40代以上の購買層向けに確信犯的に
使用しているスバルのテレビCMに
代表される、Jポップ懐メロばかり。

近年、海外のメーカーである
フォルクスワーゲンがサザンオールスターズ、
久保田利伸、氷室京介らをCMで起用したの
には驚かされたが、懐メロではなく新曲を
使用してはいたものの、やはり世代的な
ターゲットは明確だった。

そんな中、トヨタだけはSEKAI NO OWARIや
ゲスの極み乙女。の曲を使ったCMを、
バンドのメンバーも出演させて
オンエアしていたが、いかんせん
彼らの支持層の中心は10代。
マーケティング的に成功する
わけがなかった。

他の企業とは志が違うホンダの選曲

Suchmos1.GIF

ヴェゼルのSuchmos「STAY TUNE」のほかに
現在ホンダがCMで使用している曲といえば、
フィットのマーク・ロンソン&
ブルーノ・マーズ「Uptown Funk」や
フリードのファレル「Happy」。

いずれも2、3年前の洋楽ヒット曲ではあるが、
「いつの時代だよ!」と言いたくなるほど
古くはない。

それに使用料もかなり高そう。
そういえば、以前フリードでは、
一般的にほとんど無名の
ショーン・レノン
(ジョン・レノンの息子)を
CMキャラクターに使っていたし、
ホンダはもともと日本のクルマの
メーカーの中ではわりと音楽文化
そのものに敏感な印象がある。

誰もが知ってるような懐メロ曲を
(使用料をおさえるために)誰かに
カバーさせたり、もっとひどい時は
「それっぽい曲を」とCM音楽家に
ムチャぶり(よくあります)する企業とは
音楽に対しての志が違う。

制作サイドがどんなに音楽に対して
尖ったセンスで使用曲の候補を
出したとしても、クライアントの
お偉いさんの鶴の一声で却下されて
しまうのがCMの世界。


CM制作の現場にいる知人に
「どうして今回、一般的にはほとんど
知られてなかったSuchmosの曲が
使用されたんだと思う?」と
訊いてみたところ、
「プレゼンではいろんな候補曲が出たりも
するけど、最近はクライアントが
知らないような曲はまず通らない。
Suchmosを出した制作サイドも
チャレンジングだけど、
ホンダにはそういうものにOKを
出す人がいるんだよね」とのこと。

ただ流行ってるものにOKを出すのと、
流行りそうなものにOKを出すのは、
近いようで雲泥の差がある。

そして、流行りそうなものが本当に
流行った時、テレビCMは商品と
アーティストに絶大な効果をもたらすのだ。

音楽ジャーナリストという肩書きを
名乗っていると、たまに
「初めて買ったレコードは?」と
訊かれることがある。

「小学生の時に買ったマッドネスかな」と
自分が言うと、若者に
「へぇ!  小学生でマッドネス! 
渋いっすね!  さすが!」などと
驚かれたりするが
(ちなみにマッドネスはスペシャルズと
並んで70年代後半~80年代の英国を
代表するスカ・バンド)、
感心されたままにしておきたいので
当時マッドネスがホンダ・シティのCM用に
「ホンダホンダホンダホンダ」と
替え歌にしてみせた「In The City」って
曲がメチャクチャ流行ったんだよ、って
ことは言わないでいる。

あと、ホンダの往年のCMソングといえば、
1983年の3代目シビック
(通称ワンダー・シビック)で使用された
ルイ・アームストロングの
「What a Wonderful World」も忘れられない。

実は、Suchmosはそのルイ・アームストロングの
あだ名であるサッチモから名前を
とったバンドである。

広告代理店の人もホンダの人も
気づいてないかもしれないけれど、
もしかしたら、そんな見えない線が
「STAY TUNE」を奇跡の大ヒットに
導いたのかもしれない。

宇野 維正

文春オンライン 2/10(金) 7:00配信

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170210-00001339-bunshun-ent&p=1
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170210-00001339-bunshun-ent&p=2

VEZEL「世界ヴェゼル」篇 30秒


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